私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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おばさんがもう一度私を抱きしめると、そのまま玄関へ向かった。 (今日、家に帰ったら隣の暁の家に灯りが付いているんだ……) なんだか不思議な気持ちで、じわりと熱が広がった。 嬉しくて、満たされた心がじわじわと温かくなっていく。 ずっと私は、暁に会いたかった。 颯太が諦めても私は、――絶対に暁は帰って来てくれるって思ってたから。 「お、おかえり、暁」 教室のドアの前でそう言うと、暁は面倒くさそうにため息を吐く。 それが照れ隠しだというのは、知っている。 「お前には、これから聞きたいことが沢山ある」 「それ、私の台詞なんだけど!」 「……どうして俺が無理して此処に帰って来たか分かるか?」 「え?」 無理して此処に? 悲痛な顔に歪まれた暁の顔と、首を傾げる私。 それをどう会話に入ろうか交互に見る美貴先生。 微妙な空気の中、ホームルームの合図である予鈴が鳴った。
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