私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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◆ 教室中がざわざわとざわめく。 ――うそ、暁くん? ――やばくない? ――格好良すぎ! 黒板の前で先生が名前を書こうとするのを止めて、居心地が悪そうに暁が立っている。 「知っている奴らしかいないから、自己紹介とか要らんだろ」 クラスを見渡して暁がそう言うと、どっと笑い声が沸き上がる。 「6年経っても性格がキツイままなんですけどー」 「足付いてるのか? 幽霊じゃねえの?」 「失礼だな。胸の手術の傷見せるぞ」 学ランのボタンを摘まんだ暁に、美貴先生が出席簿で頭を軽く叩いた。 「それだけ馴染んでいるなら自己紹介はいいわね。暁くんは一番後ろの窓際に取りあえず座って。視力は?」 「大丈夫です」 窓際と聞いて、思わず小さく手を振ってしまった。 私は窓際の後ろから二番目だったから。 そして、暁の隣は空っぽの机が置いてある。 ホームルームはいつも朝練の疲れを癒すために屋上で眠っている颯太の場所だ。 「良かったね。隣は颯太なんだよ」
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