私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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「……その颯太はどこにいんだよ」 ムスっとしながら席に着く暁に、私も苦笑する。 「朝練の後はいつもサボりなの。でもサッカー部のエースらしいから先生も何も言わないんだよ。ずるくない?」 「……そんなんで、アイツ大丈夫か」 大げさにため息を吐くので、私もポリポリと頭を掻く。 「ご、ごめん。約束してたけどテストとか、テストとか、あとテストとか。颯太はいつも最下位なんだ」 61人中61番目の成績を中学からずっと取ってきた。 この高校だって野球の推薦がないときっと無理だったろう。 「そんなんで野球の方はどうなんだ。試合は?」 「気になるなら本人に聞きなよ。昼休みは図書室で一緒にご飯食べてるから」 「いや、いい」 頑なに颯太と接触するのを避ける暁が、私の知らない6年間の暁をチラつかせる。
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