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「……おばさんが帰ってきたんなら、またピアノ習えるかな」
「お前、まだピアノなんかすんのか?」
ほお袋みたいになった頬をもにゅもにゅと動かしながら、颯太は私を訝しげに見た。
「ちょ、ちょっとは上手くなったじゃない」
「リズムが不安定だけどな。苦手な部分が早くなったりゆっくりになったり。同じリズムで弾けないんだからさ」
「う、うるさい! おばさんに聞いてみるからいい!」
卵焼きを頬張り、むしゃくしゃと食べた。
甘い卵焼きは颯太も好きな癖に、手作りのお弁当は食べようとしない。
「いやー。ないない。ないだろ。親父とおふくろはこの件で離婚してんだ。どこに帰るんだよ」
「おばさん、さっき今から家を片付けるって言ってたよ。帰ったら綺麗になってるかもね」
「……っち」
食べ終わったパンの入っていた包装紙をぐちゃぐちゃにまるめると床へ投げつけた。
「颯太! そーゆうことしたら図書委員だってここでお昼食べれなくなるんだよ!」
「触るな!」
拾おうとした私に、颯太が大きな声を上げる。
驚いた私は、床の包装紙の前で手を止めてしまった。
「颯太……」
「離婚したくせに、今さら家族の様に戻ってくるなんて不自然だろ。気持ち悪い!」
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