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「颯太!逃げないでよ!」
ポカンと立ちつくす暁が、私を見る。
「逃げたの?」
「逃げたんじゃないかな。6年も連絡なかったから、完全に臍を曲げてるよ、あれ」
私の言葉なんて聞いてもくれない。
「臍を曲げてるのは……百花の方だと思うけどな」
カウンターに入ってきた暁が、衝立の中を覗きこむ。
「図書室の先生は?」
「お昼は職員室に戻るんだよ」
床に落としたパンの袋を掴もうとして、無くなっていることに気付いた。
(……蹴飛ばしたのかな?)
きょろきょろと辺りを見渡すが、ゴミが見つけられない。
「何を探してるの?」
「颯太が落としたパンの袋。颯太ってばおばちゃんが居ないからお昼はいつもコンビニで済ましてるの。でもおばちゃんが帰ってきたから食生活が戻るよね」
「そうじゃなくて……。いや、颯太はお昼はパンなのか?」
「うん。焼きそばパンかコロッケパン一個」
「お前なあ。高校生でしかも部活やってる颯太のお昼がパン一個って」
言いかけながら何故か不意に暁は自分の口を押さえた。
言ってはいけない言葉があったのか、あきらかに『しまった』という顔をしている。
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