私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

24/35
前へ
/224ページ
次へ
「綺麗……」 「そうでしょう? うちの馬鹿どもは気づきもしないだろうけど、百花ちゃんならそう言ってくれると思ったわ」 「綺麗で……なんだか夢みたい」 花びらが左右に揺れて、奥の景色を隠していく。 見えやしない。 隠されて、時折片鱗に触れてしまう。 「暁と颯太が何も会話しないし、見つけたら逃げちゃうし。……私の知っている二人がなんだか二人じゃなくなっちゃった」 寂しい。 悲しい。 そんな簡単な言葉ではない。 心のよりどころが無くなって、心がぽっかり空いてしまった感じ。 「暁はね、百花ちゃんがそうやって傷つくと分かってたけど、覚悟して此処にやってきたの」 壁に寄せていた段ボールからガサガサとおばさんは黒くて古いメトロモームを取り出す。 「あの二人を許してね。百花ちゃんが大切だから、それぞれ形は違えど傍に居たいのよ」
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加