私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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黙っていれば同学年の男子よりも格好いいのに、乱暴な喋り方。 なによりもほんわかしたおばさんに対してその喋り方はおかしい。 「反抗期か知らないけど、悪ぶっても全然格好良くないんだからね」 「そーだそーだ」 おばさんも手を叩いて私の後ろから煽った。 「お前、人には何とでも言えるんだな」 「まあね。それに反抗期ぶってる人なら君のお兄さんでよおく経験済みなのでもうお腹いっぱいよ」 「――っ」 また、だ。 また颯太の話をした瞬間、瞳を鋭くさせた。 でも私が不審がるよりも早く態度を緩めて頭を掻いた。 「お前の家のご飯美味しいのに、全然食べれないとかむかつくじゃん」 「ぷっ」 不機嫌になった理由がそんなのなんて、格好悪くて吹きだす。 するとバツが悪そうに鞄を玄関の端に置くと、踵を返した。 「先にお前の家、行ってるぞ」 「へ、は!? 一緒に居こうよ!」 暁を追いかけると、揺れるピンクの花を眺める暇も無く。 私はその花の名前すら知らないまま、自分の家へ帰った。
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