私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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「ふ、るーい」 「あ?」 「暁の家の広いリビング見た後だと、ウチの家の古さが際立つというか」 「そうか? お前の家って居心地いいじゃんか」 そう言いながら、ただいま、と暁は私の家に入って行った。 なのに違和感が感じられなくて、私よりもここに家の子みたいに慣れた様子だった。 「暁ちゃん!?」 「うっす。うわ、おばちゃん変わってない。若っ」 台所できゅうりを切っていたお母さんが、包丁を握り締めたまま駆け寄ってきた。 私もお母さんも150センチ以上155センチ以下の、双子の様に小さい体型。 だから暁がお母さんの横に並ぶと、暁の成長ぶりが際立った。 「今ね、暁ちゃんの大好物だった出汁巻き卵も作ってるんだけど、味覚は変わってる?」 「変わってないっす。あ、俺、手伝いますよ」 暁が腕まくりし出したら、お母さんが私の方を見た。 「……百花もお手伝いできる?」 「お前、家でお手伝いもしてないのかよ」
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