私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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「なるほど」 「お前、料理出来ねえの?」 馬鹿にしたように笑うので、睨んでやる。 「出来ないんじゃないの。しないの」 「しなくてもおばさんが居るからな」 「……っ」 再会は嬉しかったのに、久しぶりの暁の毒舌はやはり腹が立ってしまう。 離れ離れになった暁の家よりはうちは恵まれてるかもしれないけど、そんなこと言わなくても良いじゃん。 もっと、再会に喜びとか感動とかあってもいいのに、今日は嬉しいだけじゃない複雑な感情ばかり。 結局、大きな恵方巻きが二本できた。 これは冷蔵庫に入れて帰りに持って帰って貰うことになった。 それとほぼ同時にお父さんとおじさんが帰ってきて、一気に賑やかになった。 「暁。おかえり」 おじさんがぽとんと落とす様に小さく言ったけれど、暁は鼻で笑い飛ばした。 「ここは俺の家じゃねえよ」 「まあ、そうだけどね」 苦笑したおじさんはそれだけで、スーツの上着を脱ぐとお父さんからハンガーを受け取りかけていた。 その横顔は、大きくなった颯太みたいな。 ……スポーツ馬鹿の颯太と研究者のおじさんじゃ雰囲気は間逆なんだけどね。 「百花、ビール取ってあげて」 「はあい」 台所に戻ると、それを見計らったようにおじさんが暁の頭を撫でたように見えた。
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