私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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6年ぶりにうちの家族と暁の家族でご飯を食べた。 正確にはお兄ちゃんと颯太が居なかったけれど。 ――6年前、泣きじゃくる私を庭に引きずり出して皆でバーベキューをしたのがもう遠い夢の様に思える。 暁は体力がつくまで手術が出来ず、6年も向こうにいた。 その経緯を、大雑把に語りつつもそれ以上聞くなとピリピリしていた。 何だか、隠しごとをされた気分で悲しかった。 「貴方、袖」 「え、ああ」 途中、お醤油が付きそうになったおじさんのYシャツの袖をおばさんが捲る場面も見られて、本当に離婚の危機だったのか信じられなかった。 「……」 何だろう。 暁が帰ってきたことで、少しだけ、――少しだけ私の知っている光景が違って見えた。
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