私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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その日は、話が尽きることなく遅くまで親達も話し込んでいた。 なので、いつも颯太が帰ってくる時間に、玄関をスライドする音が聞こえてきたのに、――今日はしなかった。 「ダメだ。親父、絶対起きねえよ」 ソファでうつ伏せに倒れたおじさんに私がタオルケットをかぶせていたら、暁が髪を掻き上げてうんざりげに言う。 「ちょっとはしゃいでたね。暁が帰ってきて嬉しいんだろうね」 「まあ、そうだろうな」 「暁ちゃん、今日はうちに泊まらない? 睦月の部屋使っていいわよ」 お母さんがお兄ちゃんのジャージとタオルを持ってやってきた。 「お父さんもソファで寝ちゃったし、おばさん二人は寝室で寝るわ」 「……や、俺、荷物をちょっと片付けたいんで帰ります」 「そう?」 残念がるお母さんを尻目に私は冷蔵庫からタッパに入った恵方巻きを出した。 「これ、颯太に渡しておいて」 「百花、何を」 「ああ、分かった」 泊まって欲しいお母さんの制止を無視して、暁は受け取ってくれた。
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