私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

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リビングでは、親父二人の鼾。 寝室からは、お母さん達の楽しい会話。 空には猫の様な三日月。 隣の家は子ども部屋の窓から明かりが漏れている。 二人はあの部屋で会話をちゃんとしているのだろうか。 心配になって何度も窓から覗くと、夜なのに淡い光の下、ピンクの花がそよいでいた。 うちの家は賑やかなのに、私の心は何故か不安で一杯だった。 その不安は自分では上手く言い表せなくて、自分の気持ちのはずなのに酷く焦った。 暁が帰ってきて嬉しいはずなのに、颯太と二人の関係を見て、不安になった。 仲良しだった三人にはもう戻れないのか。 私には何ができるのか。 ガラガラと何かが心の奥で壊れていく。 それを私は、何なのか……自分でも分かっていない。 いや、自分が一番良く分かっていなかった。
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