私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。

7/35
前へ
/224ページ
次へ
「暁……っ」 「泣くなよ。なんでお前、そんなに」 暁は口ごもりながらも私の元へ近づいてきた。 「なんでそんなに俺に心配かけさせんだよ」 色素の薄いハニ―ブラウンの瞳。 サラサラで光りに当たると、茶色く見える髪。 今にも消えてしまいそうな白い肌は相変わらずだったけれど、6年も経った今、暁には男の子みたいな筋肉がついて骨ばった身体になっていた。 いや、男の子だ。 優菜が興奮するぐらい、暁は小さな頃から王子様みたいなルックスで、甘い笑顔で毒を吐くやつだった。 「暁……。何で居るの? 手術成功したの? 幽霊?」 「今どきの幽霊は校長に挨拶して転入してくるのかよ。お前、馬鹿だな」 顔をくしゃくしゃにして笑う暁は、すごく大人びていてびっくりした。 「母さんも離してやれよ。そいつ、小さいままだから潰しちゃうだろ」 「あ、あら。ごめんね」 「い、いえ。おばちゃんも久しぶりだから嬉しい。あ、颯太」 私の言葉に、暁の顔が少しだけ怖くなる。 目を細めて値踏みするような、冷たい表情。 「私、颯太にも教えてくる。あいつ今日はサッカー無いって言ったからどこかで眠ってるかもしれないし」 「――百花」
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加