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「あ、あら、やだ。夏目さんったら」
「あかりさんにこいつの書類等渡したいものがあって、下宿先に寄ったんですよ。そうしたら、此処だって聞いて」
「よく来るカフェなんです。うふふ」
何か察したのか姉ちゃんはお金だけ置いてすたこらさっさと逃げていった。
その俊敏さは、まさに風のごとく。
「……」
「すいません、珈琲」
何故か姉ちゃんが座っていた席にどかっと座ると足を組みながら、まじまじと俺を見ている。
「あの、拓馬」
「ん?」
「どこから聞いてたんだよ」
珈琲を飲むながら平静を装って聞いていたが、珈琲の味が全くしない。
「ボーっとしてどうしたの?って辺りからかな」
全部じゃんか!
「気付いてたんならさっさと声かけてくれよ」
「タイミングを待ってたんだ。盗み聞きするつもりじゃなかった」
悪いな、と悪びれもせずに言うと、無言になった。
「聞いてたならばらすよ。俺、子どもの奨学金とかボランティアへの取り組みに積極的な会社に就職考えてる」
「へえ」
「拓馬に言ったら、大学編入資金出すとか言われそうだったから言えなかったけど」
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