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「お、おう。遅くなるのか。そうか、気にすんな」
何故か口に出してしまうほど動揺してしまったけれど、仕事なら仕方ない。
『無理すんなよ。夜ごはんは何か作るよ』
『それだけは止めろ』
「……」
最近、お茶や珈琲いれるぐらいできてるじゃん!
オニギリだって握れてるし、インスタントの味噌汁だって味がうっすくならない程度に注げるし。
そうだ。カレーだ。
カレーなら材料切って水入れて、ルー溶かすだけ。
姉ちゃんに嫁に行くなら覚えろって、引っ越す前に何度か見せてもらったし。
嫁じゃねえけど。
「うし!」
驚かせるためにも返信はせずに、携帯をぽけっとに入れると、俺はスーパーへと急いだのだった。
スーパーで材料を買い、皮をむき、野菜を切り、肉を切り、炒める。
簡単だ。めっちゃ簡単だ。
なのに、あちこちに剥いた皮は飛んでいくし、野菜は包丁からつるんと飛んでいくし、玉ねぎは涙出るし。
拓馬はこんな風にキッチン汚さずテキパキできてたような気がするな。
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