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「ち、ちがーう! 違う!誓うから行かないで! そんな無言で大人の対応やめろー!」
慌てて立ち上がって拓馬の服の裾を掴む。
「おい!」
「うわーん」
ぬるっとした滑りに足を取られ、すってーんと転んだ先は湯船の中だった。
「ご、ごめん」
「あぶねーだろうが! 怪我はねえのか!?」
一緒に裾を掴まれ滑りそうになった拓馬は、俺を助けようとしてくれたらしい。間に合わなかったけれど、片足だけ湯船に入ってしまい、俺のお腹の間に腕を回してくれていた。
「怪我はないけど、こ、心の問題が」
「……行かないでって、見ててほしいのか?」
そう言われて、頭が熱くなる。
かあああっと真っ赤になるのが分かった。
「ちがっ その、これ、拓馬が実際に使ったことあるって聞いたから試してみたくて」
ごにょごにょごにょと言い訳を始めると、大きく溜息を吐かれた。
「言い訳は、あとで聞く。が、俺も一緒に入るぞ」
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