プロローグ

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「女の子ばっかで入りずらいかもしれないけど、待ってますね」 ふんわりと笑うと、その美味しそうな青年はカンガルーの看板が揺れているドアへ吸い込まれていった。 「……は?」 「かじゅ、どうした?」 「あの人、めっちゃタイプ」 「だろうな。なんかお前、可愛かったし」 頬を染める先輩を放置し、チラシとその店を交互に見る。 「これ、やばい。あの青年、あのチムチムの店長だって!」 バカみたいな名前とか言ってたけど、あの人が考えたんなら可愛い。 カンガルーの名前がチムチムなのか。センスあるなあ。 「あのな、かじゅ」 「名字は最後まで言って下さい。俺は華樹寺(かじゅでら)です」 まるで下の名前の和人(かずと)を馴れ馴れしく呼ばれた気がして不快だ。 「かじゅでた、っと華樹寺」 いちいち噛まないでほしい。苛めてほしいのだろうか。 「今の青年、21歳ってお前より大分年下だろ」 「は!?」 先輩からチラシを奪うと、何故かご丁寧に店長のプロフィール欄があった。 (ってことは女子高生によく聞かれるんだろうな)
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