3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
泣く赤ん坊
一ヶ月くらい前から、アパートのどこかから赤ん坊の泣き声が聞こえるようになった。
近所付き合いなんてほとんどないから詳しくないが、どうも子連れの夫婦かシングルマザーが引っ越して来たらしい。
独身物件のアパートではないので、子供のいる人間が入居してもいいのだが、こうも鳴き声が響き渡ると、さすがに煩わしくてたまらない。
部屋を探して、一言文句を言ってやろうか。そんなことを本気で考え始めた頃、ふいに泣き声がしなくなった。
迷惑だと悟ってまた引っ越した思っていたけれど、そうではないことがすぐに判明した。
泣きまくる我が子に、育児ノイローゼになった母親が、赤ん坊を殺してしまっていたのだ。
この事件は全国ニュースに取り上げられ、結構な話題となったが、その際聞いた情報に、俺は大きく首を傾げた。
報道された赤ん坊の死亡時期が、泣き声が聞こえなくなった時期よりかなり前だったのだ。
こんな時くらいはと、普段は馴染みのない同じアパートの住人達に話しかけて確認してみたが、全員、俺と同じ頃まで赤ん坊の泣き声を聞いていたと答えた。
死亡後もずっと聞こえていたあの泣き声は何だったのだろう。
もしかしたら、自分が死んでることに気づいてほしくて、それでずっと泣き続けていたんだろうか。それか゜叶ったから泣き声はしなくなったのだろうか。
だとしても…殺されてしまったこと自体は可哀想だけれど、泣きすぎるのは勘弁してくれよと、っいそう思ってしまう自分がいる。
泣く赤ん坊…完
最初のコメントを投稿しよう!