第一章:アルド旅立つ

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アルドは自室に閉じ込められたあと、ため息を一つつき、しばらく無表情で部屋の石造りの壁を見つめていた。 「よし」 アルドはおもむろに立ち上がり、カバンの中の教書や卒業証書等をベッドの上にばらまき、代わりに部屋に置いてあったお菓子類、魔術辞典、短刀、工具、縄等の旅に必要そうなものを詰めた。 また、クローゼットを開け、教舎での訓練のために買ってもらった戦闘服を取りだし、着替えた。戦闘服は丈夫な布で作られた上下のつなぎに、革や丈夫な布を幾重にも重ねた丈の長いベスト、同じ素材で作られた腰巻き、革製のチョーカー、アームカバー、グローブ、ブーツ である。他にも下着や替えのつなぎ、タオル等を一枚二枚取りだしカバンにいれた。 さらに、アルドの部屋に置いてある大人の男よりも一回り大きいぐらいの本棚を力任せに前に引いて移動させ、裏側にある誇りまみれの手のひらサイズの布袋を取り出した。中には銀貨が13枚入っている。銀貨一枚が1000ブロンズであり、銀貨十枚あれば安い宿を借りて一週間ほど生活できる程である。 「さてと、こんなもんかな。」 旅支度を終えたアルドは、机に向かい、紙とペンとインクを取り出し、手紙を書き始めた。 ──────────── 父さん、母さんへ 今までお世話になりました。申し訳ありませんが、僕はヘルデント家の家督を継ぐ気はありません。冒険者になるためにこの家を、この町を出ていきます。いつか、立派な冒険者になれたときは僕を誇ってください。 今までありがとうございました。それでは、御二人ともお元気で。さようなら。 アルドライト・ハール・ヘルデント ──────────── その手紙を部屋の入り口のドアに張り付けた。そして、ベットからシーツをはがし、そのまま入り口と反対側の窓を開け、三階のその窓から勢いよく飛び降りた。
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