第一章:アルド旅立つ

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アルドは三階の部屋の窓から飛び降りた。飛び降りると同時にシーツの四隅を両手でもって広げた。 『風魔法ウィンド』 アルドが魔法を使うと、回りに強めの上昇気流ができ、広げたシーツでその気流を受けることでアルドはゆっくりと庭に降り立った。そして、庭を駆け抜け、ヘルデント家の敷地外へと走り去っていった。 マドリアラス領テルミウス、町の真ん中には大河が二本流れ、総人口150万人とマドリアラス皇国の中でも大規模な町である。ヘルデント家邸宅はテルミウスの中心部と西端の中央付近に位置していた。アルドは早い内にテルミウスの外へ出ようと考えていたが、ヘルデント家邸宅よりもっとも近い町の外に続く門、テルミウス西側の門ではなく、もっとも遠いテルミウス東側にあるレムの門を目指した。 というのも、アルドが逃げ出したのが判明したとき、アルドの父親は他の貴族たちの力も借りてアルドの旅立ちを阻止しようとすることが予測できた。ヘルデント家は三大貴族まではいかないが、テルミウスの中ではなかなか有力な貴族なのである。その後継者候補が逃げ出したとあらば、他の貴族にとっても都合が悪いのである。 しかし、この広大なテルミウスすべてを見張ることは貴族たちの力を使っても容易ではない。ゆえに、真っ先に貴族たちの私兵が向かうであろう西側の門は避け、もっとも遠いレムの門を目指したのである。 ヘルデント家邸宅からレムの門までは早くても徒歩だと10日ほどかかる。 「がはは、めずらしいガキがいたものだ、仕事を求めて町の中心に行きたいってやつはいても、町の端っこに行きたいってガキはあったことがねぇな。 にしても物知りなガキだな、急行馬を知ってるガキなんてのもそうそういたもんじゃねぇ。」 「レム地区に祖父母が暮らしてまして、久しぶりに会いに行こうと思いまして。 以前本で見たことがあったんです。町の中心部と端の物資の流通を担ってる馬の特異種ライデンの馬車があると。」 アルドは急行馬の操者ガイルに頼み込んで、その急行便にのせてもらっていた。急行便に乗っていれば、その日の内にレムの門があるレム地区までいくことができるのである。
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