キミの幸せだけを願っています

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「そろそろいじめるネタも尽きてきたのかな…」 今日は、机の上に五百枚入りのコピー用紙が四束。コピー機に補充しておけ、というメッセージだろう。 別にこれぐらい苦じゃない。誰がやるなんて決まっているわけじゃない。 だから、誰がやってもいいのだ。 「ネタがないならもうやめてくれないかな」 大丈夫。大丈夫。大丈夫。 そう念じながら、コピー機のトレイを開けていく。 この様子を見ても、誰一人声をかけてはこない。 あたしに嫌がらせをしているであろう女性たちは、パーテーションで区切られたこの向こう側で笑いをこらえているに違いない。 けれど、この同じ空間にいる同僚たちでさえ、背後で含み笑いをしているような気がしてならない。 嫌だな、こんな被害妄想。 「加賀さん、手伝おっか?」 唯一、瀬戸くんだけが気にかけてくれる。 構わないでほしいと思っていたけれど、やっぱり、負けそうになってしまう。そんな時には、何気ない一言だって嬉しい。 「ありがとう。でも、もう終わるから平気」 加害女性たち、と呼べばあたしは強制的に被害女性になってしまうので、その呼称は避けたい。部外女性たち、と改めようと思う。 彼女たちは、やっぱりこの状況が面白くない。 「瀬戸さん、次は瀬戸さんがターゲットにされちゃいますよ」 薄いパーテーションを超えて、三人の女性たちが姿を現す。深いスリットの入ったスカートから覗く美脚に、十センチ以上ありそうなピンヒール。ボスの両脇には、子供向けアニメのキャラクターの雰囲気を醸し出した、ずんぐりむっくりの女性が一人。そして、ボスを真似たいけれど方向性を間違っているお色気担当が一人。 社会人としての自覚を問いたい。 「えー?加賀さんになら狙われたいなあ」 ヘラヘラと、でも、ずっしりと重みのある声で。まっすぐに彼女たちを見据えて。 「性格の悪さは顔に出る、ってヤツ。本当だね」 瀬戸くんは、言った。 何か言いたげで、でも、声にならない声を上げて、部外女性たちは再びパーテーションの向こうに姿を消す。 「瀬戸くんも悪く言われちゃうよ?」 「任されちゃったからね。守ってくれ、って」 「え?」 「無茶振り王子様に」
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