キミの幸せだけを願っています

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目の前に積まれたA4サイズの書類の山。 隣の欄の課長印が押された起案文書が捌いた端からわいてくる。 「華金だろ、今日は」 毎週とは言わないから、月一ぐらいで金曜日は15時には帰りましょう、みたいな改革を国が起こしてくれればいい。 ワンダフルフライデー、とか呼称も決めてさ。 「次長!まだですか、あたしの起案!」 あの日から異様に馴れ馴れしく、ふてぶてしく俺に絡んでくる黒川。由宇を異動させる原因を作った俺を、やっぱり許していないらしい。 話相手がいなくなったみたいで、課内でいつもつまらなそうにしている。 「印ついてやるから、ちょっと都知事に直談判してきて」 「何をですか」 「ワンダフルフライデー」 「…内容は訊かないですけど、ネーミングセンスが全くないんでロクなもんじゃないと思ってます」 黒川の次の査定、本当にどうしてくれようか。 「由宇はデートですよ、明日」 「あっそ」 「行かないんですか?広島」 「だから、行かせてくれよ。ワンダフルフライデー策定して」 心底蔑んだ目で俺を一瞥すると、諦めたように部屋を後にした。 平然を装ったつもりだが、内心は結構傷付いている。 会いたいときに会いに行ける特権を持っている。 それが、彼氏だと俺は思う。
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