キミの幸せだけを願っています

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俺が一番、由宇を見てきた。守ってきた。愛してきた。 由宇の幸せを、願ってきた。 欲をかけば、幸せにするのは俺であればと、ずっと思ってきた。 当たり前のように、そう思っていた。 出世よりも由宇だと、もっと早く認めていればこの状況もきっと違った。 特定の誰かをこんなにも傷付けることなんて、きっとなかった。 「すみません、お呼びだてして」 「いいえ。多分、そろそろ連絡はいただけると思っていましたから…」 彼女に不満なんてない。 社長令嬢なんて肩書きナシにしても、きっといい男に愛されて、結婚して、いい奥さんにもお母さんにもなるだろう。 出逢う時期が違っていたら、俺たちはうまくいっていたかもしれない。あまりにも年は違い過ぎるけれど。 「加賀さんのこと、少し調べさせていただきました」 「え」 「あ、調べるといっても、ただ履歴書を拝見しただけなんですけどね」 言葉を間違えましたね、と照れ臭そうに口を覆う。 「ほら、履歴書用の写真って、どうにもうまく撮れないのが普通ですよね。免許証の写真みたいに。まあ、わたしは履歴書を書いたこともなければ免許も持っていないんですけど…」 どう答えることが正解なのか。 周りにチヤホヤされることが幸せなんじゃない。求める必要のない財力と安定があっても、それは必ずしも幸せだとは限らない。 社長の娘として産まれたことが、仇となることだってある。 「俺も、ひどいもんですよ。免許証の写真は特に。あれ、撮り直しさせてもらえないんですよ」 「ふふ…見てみたかったです」 見てみたい、と言わない彼女の気持ちが、痛くて。 重くて。 逃げ出したいけど、それは卑怯だとわかったから。 「加賀さんは、履歴書の写真もすごく綺麗でした」 「そう、ですか」 「まっすぐ前を、カメラを見て、絶対に採用されるんだって強い意志を持っている目でした。採用しなきゃ後悔するぞ、って、言っているみたいだった」 「目つきが悪いって言われたこともあるそうですよ」 「とにかく…わたしにはないものをたくさん持っていらっしゃる方なんだなって、思いました」 「眞由美さん、」 「藤次郎さん」 「お別れ、しましょう」
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