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手渡された衣装を前に、京介の気分は釣瓶落としのような速さで落ちていった。
「ドレスですなぁ」
そんなの見りゃあ分かるだろと、上川が返す。
「すみません。試食会なんですけど、一応パーティー形式なので」
焦って説明を入れるのはエミリア。
「うぅん、大丈夫~。男ってバレないような華奢見せデザインをバッチリ選んで来たからぁ。敢えて綺麗なデコルテは出して肩は隠すカンジ?で、セクシーな喉仏はこのチョーカーでカバー」
「こちら、上川さんのお知り合いですか?」
やたら距離の近い強烈なキャラに耐えかねて、京介が上川に話を振る。
「ああ、おみっちゃんとは古い付き合いだな。だから心配すんなって。腕は本物だから」
壁に背を預けながら上川は答えた。
「いいですね、楽しいだけの人は」
京介は嫌味ったらしく小さな抵抗をした。
「悪いな、メチャクチャ楽しいわ」
上川も上川で言い返す。
「でも、身代り役がお前で良かったよ。テーブルマナーは完璧だろ?」
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