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上川が運転する車の後部座席に京介が座り、街路樹の並ぶ通りを行く。
「あ。四係の奴らが先に現場入りして検索と消毒してっから」
「えっ、鷺ノ宮さんたち居るんですか!?」
京介はリアシートから背を離して身を乗り出した。
この手の任務はチームで動く通常の業務とは別に、何時も上川と二人だけで行っていた。
京介は今回も例に漏れずそうだと思っていので、渋々女装を承諾した所もあったのだ。
「試食会だがそこそこ人数来るんだよ。それで一ヶ所に集められた状態だ。流石に俺一人で人的被害ゼロは厳しいからな」
エミリアの父親への見せしめで彼女が狙われているなら、彼の属する裏社会が関わっていると考えて間違いない。
ならば、雇うのは確実に殺害を遂行出来る人間……要は手練れが今回の相手だ。
京介も危険な任務だというのは承知している。
「鷺ノ宮たちには通常任務として動いてもらってる。お前が女装してるとは言ってないから安心しろ。あいつらの前でもお嬢さんとして振る舞えよ」
「全然安心出来ない」
京介の顔は青ざめていた。
「何が」
「いいです。深く考えないようにします」
そして今度はぐったりとリアシートに凭れた。
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