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「下痢だ」
そんな京介の横から、上川が何時ものぶっきらぼうな口調で返した。
「え?」
その二文字に、そこに居た誰もが目を丸くして言葉を失う。
「何食ったか知らんが、彼女の家に着いた途端腹が痛いって言ってな」
参ったな、という感じの上川の口調。
「あれじゃ使いモンにならんので置いて来た。今日は四人でやる。頼んだぞ」
「は、はい」
上川の押しに圧倒されるように三人は首を縦に振り、そして踵を返した。
「瀬羽須も腹下すんだ」
「人間離れしてるからイメージなかったけど、やっぱりちゃんと人間だったな」
「……よせ。瀬羽須、今頃まだ苦しんでるんだから。気の毒に」
そんな会話をしながらホテル内に戻って行く。
「あいつ、赤玉持ってっかな……」
最後にはそんな呟きが聞こえた。
自動ドアが閉じると同時に、
「よし、上手く誤魔化せた」
と白々しく上川は言った。
肩の高さで握られた右手のガッツポーズが余計にそれを感じさせる。
「選りにも選って下痢って何ですか?」
声を低くして京介が睨んだ。
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