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男の体は床に叩き付けられ、見舞われたその一撃で極端に動きが鈍くなった。
上川はその男の上に乗り、サバイバルナイフを叩き落とし、後ろ手に腕を捻った。
「ごめんな。相手が俺等じゃなければ、ミッション成功してたのに」
そして手錠を取り出す。
「誰か、時間録ってくれ」
上川のその呼び掛けに応じたのは、招待客の避難を終わらせ戻って来た強行犯係の刑事だった。
「殺人未遂の現行犯で緊急逮捕」
上川に手錠を掛けられた男は、その後強行犯係へ引き渡された。
「お疲れさん」
上川が京介を労う。
「口を割りますかね、あいつ」
連行される男の後ろ姿を見送りながら京介が呟いた。
「黙秘だろうな。ま、俺達の仕事じゃねぇし」
実行犯の男は、今改めて見ると京介と同じ位の歳にも見える。
金の為かもしれないし、他に事情があるのかもしれない。何故この仕事に身を落としたのかは分からない。
それでも、躊躇なくターゲットに銃口を向け発砲出来るのかと思うと、京介の胸中は複雑な色を滲ませた。
上川がそんな京介に気が付く。
「そんな染みっ垂れた顔すんな。気に入ったなら好きなだけ女装してていいから」
「違いますって」
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