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一枚は全身。そしてもう一枚は、バストアップと呼ばれる胸から上を撮った顔写真。
緩やかなウェーブの掛かったアッシュベージュの長い髪と神秘的なオリーブ色の瞳。
社交界の雰囲気漂う気品のあるドレスとアクセサリーを身に纏った、淑やかな笑みを浮かべる女性……若しくは、まだ少女。
年齢は十代後半から二十代前半といった所だろうか。
それが、写真に写る人物。
「名前はエミリア・カーソン。訳あって国名は伏せられているが、小さいながらも豊かな国の貴族のご息女で、先月から日本に語学留学してるそうだ」
と、課長が要人の情報を伝える。
「で、また彼女がどうして?」
上川が気だるそうに尋ね返した。
「殺害予告だ。信憑性はかなり高い」
殺害予告、と聞いて二人の眼の色が変わり背筋が伸びた。
「この若さで命狙われる程の何やらかしたんですか?」
「この娘は何もしていない。問題があるのは、依頼主でもある彼女の父親のようだ」
黙って事の成り行きを聞いている京介の隣で、課長と上川の会話は続く。
「表向きは貴族でありながら、裏社会とも密接に繋がってるらしい。詳しい情報は我々には非公開だがな」
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