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「出たよ……」 パンツのポケットに手を突っ込み口元を歪め、呆れ切った上川が虚空を仰ぐ。 「娘は何も知らない、何も関係ない。だから守ってくれという訳だ」 課長は上川に同感の念を持ちつつ、依頼にはフォローを入れる。 「……仕方ないですね」 上川もそう言われたら断れない。 「なら方法は」 「それは嫌です」 呟く上川の隣で、京介が初めて静かだが強い口調で口を割った。 「まだ何も言ってねーだろ」 「絶対嫌です」 必死さも伺える早口。瞳にも感情が滲む。 そんな京介を横目に見つつ、上川がニヤリと口角を上げた。 「ま、そんだけ全力で否定するって事は自覚あるみたいだな。このお嬢さんが、お前にそっくりだって事に」 そこに居る誰も否定しない、微妙な空気の流れる静かな、間。 警護対象者のエミリアは、性別こそ違うが誰に聞いても納得しそうな程、京介によく似ていた。 「若干違うでしょ」 そんな空気を断ち切ろうと、京介が慌てて否定する。 「化粧で修正出来る誤差だ」 ミッションに楽しみを見出だした上川は淡々と返した。
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