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「髪は」
「カツラ」
「眼の色は」
「カラーコンタクトだよ」
くっだらねぇな、と上川がぼやく。
「身長!これはどうしようもないでしょ?」
どうだ、とばかりに京介は上川に突き付けたが、
「エミリアさんはモデルの経験もあるそうだ。だから、かなり高いんじゃないか?」
横から入った課長の一言が見事に彼に留目を刺した。
課長に言われては、京介はこれ以上抵抗する事が出来ない。
「はい。京介君、完落ち、です」
頭を垂れる京介の肩を叩くようにして上川が抱く。でも顔中笑みが駄々漏れだ。
「瀬羽須、頼んだぞ」
すまんな、という気持ちの滲む声で課長が言う。
「……了解しました」
「よく言った。それでこそ俺の自慢の部下だ」
ベタな刑事ドラマのひとコマが上川によって再現される。
京介の胸に静かに怒りが揺るぎ立った。
「……ただな、京介」
と、上川が今度は真剣な表情で京介に顔を寄せる。
「何ですか」
「髭には気を付けろよ?」
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