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オレが近づいても、読書に夢中で気づく様子はない。
ヤツの目の前に立ったところで、ようやく本から目を離し、オレを見上げた。
「ぁ…っ…」
一瞬で顔色が変わった。
脅してるわけじゃねぇんだけどな。
「昼は、いつもここにいるのか?」
「は…はい!」
返事と同時に立ち上がって直立不動。
オレ、何もしてねぇよな?
しっかし…
「ちっちぇな」
「こ、これでも、16歳の平均身長はあるんです!」
気にしてんのか?可笑しい…クックッ
「平均身長っていくつなの?」
「…169.5…です」
どした?急に声がちっちゃくなった。
「…先輩は…?」
「オレに興味出てきた?」
「そ、そんなんじゃ…」
コイツ、直ぐに顔が赤くなるな。
「悪ィ。184だ」
「……へぇ」
ぁ…この表情…。
事後、コイツの髪を梳きながら、何の話をしてた時だったかな…
今の顔、そん時の表情と同じだった…。
「なあ。隣いいか?」
と、訊きつつも強引に座った。
と同時に、心地良い風が吹いてきて、しばらくその風に身を任せた。
「あの……?」
「あっ悪ィ。ちょっと訊きてぇんだが。
あん時、二度とオレに触んなって言ったけど…あれ、どういう意味?オレ、何か気に障る事したか?」
「ぇ…ぁ…そのままの意味…ですけど。
やっぱり…ああいう事は…。
その…気が動転してて…あんな言い方になってしまって…ごめんなさい」
まあ…誰とでもヤるようなタイプには見えねぇし、気持ちは解るが…
ただ…あん時…急に態度が変わったんだよな…
「アンタ、名前は?」
「…ぇ?」
「名前ぐらい、いいだろ?」
「…け、剣崎…蓮…です」
「レン。オレの方こそ、ごめんな。あんな顔させるつもりじゃなかったんだ。あれから、気になってさ…」
「……えっ?」
「アイツ誰?彼じゃねぇんだろ?」
これには、ただ首を横に振るだけ。
オレが一番気になってた事には、答えてくれないんだな。
「わかった。もう訊かねぇし、レンには、指一本触れねぇよ。それでいいんだろ?」
レンは、あん時と同じ悲しそうな顔で頷いた。
何で、そんな顔すんだよ。
ああっクソッ!!
元々面倒事に関わるのを避けてきた性分。
そろそろ引き時なんじゃねぇのか?
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