2909人が本棚に入れています
本棚に追加
/706ページ
「あの…眠れないので…話しても、いいですか?」
「んぁ?ぁ…いいぞ」
「あの…今日は、ありがとうございました。きちんとお礼してなかったので」
「いいよ。別に。結局…遅くなったんだ…」
あの光景を思い出し、無意識に背中を向けてしまう、情けないオレ。
「……母とは、血が繋がっていないんです」
「は?」
「さっきは、すみません。おかしな会話をしてしまって」
「ああ。再婚でもしたのか?」
様呼びだったよな。
「……いえ。オレの実の母が、父の不倫相手で。 母が亡くなって、オレを家に入れてくれたのですが…。 今の母や兄にしてみれば、不倫相手の子供なんて、受け入れがたいですよね」
……そういう事か。
だからって、乱暴にヤってもいいとでも思ってんのかよ。
「父親は?何も言わねぇのか」
「仕事が忙しくてなかなか…。なので、先輩とお父様の関係が、ちょっと羨ましいです」
「そうか?でも、最近だぜ?話すようになったの。中坊の時なんて、顔合わせても話もしなかったからな」
「ぇ…そうなんですか?そんな感じ、全然…」
「まあ、お互い余裕が出てきたのかもな」
「中学の頃だって、根っこには、お互いを思いやる愛情があったという事ですよね」
「なあ、レン」
オレは、レンの方に向き直った。
「オレが言っても、信憑性ゼロだと思うが。ケンカっつーのは、お互いやり合う事だ。 一方的にやられてるのは、ケンカじゃねぇ。暴力だ。これからも、繰り返し暴力を受けるようなら…今日みたいに、連絡くれないか?」
「…で、でも、そんな…今日みたいなご迷惑…もう、かけられません」
「迷惑じゃねぇって言ってもか?」
「はい…」
「そうか。困らせて、悪かったな」
クソッ
布団をかぶり、再び背中を向けた。
他人のオレには、これ以上どうしようもねぇじゃんかよ!
最初のコメントを投稿しよう!