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バイクをとめてある駐輪場に向かってる途中、正門前で、相手の男を見かけた。
ウチの生徒と立ち話している。
その生徒の方は、遠くからでも直ぐ解った。
金髪に空色の瞳。
特進(特別進学コース)の紫津木藍だ。
話している様子から、そんなに親しくも無い事がわかる。
別れ際、相手の男は、ペコペコ頭を下げてるのに対し、紫津木藍は、軽く手を振っただけ。
ふーん。
紫津木藍もバイク通学だから、向かう先はオレと一緒。
何となく、後ろを歩いていると、急に立ち止まったので、オレも止まる。
ヤツは、ポケットを探って携帯を取り出すと、操作し始めた。
LINEか?
しばらく眺めていたと思ったら、慌ただしく携帯をポケットにしまい、急に猛ダッシュ!
はっ?! ちょっ…待て…!
何故かオレも、ダッシュで追いかける。
駐輪場に着くと、紫津木藍は、バイクに跨がりメットをかぶっていた。
「紫津木藍!」
オレは、とっさに声をかけていた。
どうしようていうんだ?
「あ?フルネーム?」
「別にいいだろ」
「悪いが、今急いでんだ。用があんなら早くしてくれ」
フルフェイスのメットを被ってるせいか、表情が読み取れない。
「いや……明日でいいわ」
何を訊こうとした?
相手の男の事を知ってどうする?
もう関係ねぇはずだろ?
「そっか。わりぃな」
センコーには、正門出てからエンジンかけろって言われてっけど、すげぇ急いでんな。
モデルの仕事にでも、遅れそうなのか?
紫津木のバイクの走り去るエンジン音を聴きながら、オレも、バイクに跨がりエンジンをかけた。
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