出発

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ジェニファーがボウガンに火炎弾を込める。 セルタス種が苦手な火属性だ。 ヒナも目標に向け、勢いよく接近。 徹甲虫はこちらに気づいていない。 「閃光玉だーい!」 ヒナが閃光玉を徹甲虫の真正面に投げた。 まばゆい光が、あたりに炸裂する。 徹甲虫が、光の衝撃に驚き地面に落下した。 仰向けにひっくり返り、じたばたとする。 ヒナは背中の大剣を振りかぶり、力を溜めた。 この間に徹甲虫の腹に狙いを定めたジェニファーのボウガンが火を噴いた。 狙い通りに命中し、徹甲虫の体力を削る。 そして照準を一切ずらさず、すかさず連射。 火炎の弾の嵐が徹甲虫に降り注ぐ。 追い打ちにヒナが溜めに溜めた力を解放し、大剣を振り下ろす。 徹甲虫の角に命中し、その角をへし折る。 徹甲虫は先ほどの閃光玉でまだ目が眩んでおり、体勢がまだ整えられない。 ジェニファーは休まず連射を続け ヒナも、もう一度剣を振り下ろす。 ようやく徹甲虫も起き上がり、体勢を整え素早く空中に飛び上がる。 ジェニファーがボウガンを構えるが、徹甲虫は素早く動き回り照準が定まらない。 崖の外へと徹甲虫は逃げ出した。 ヒナの剣がどうあっても届かない場所だ。 そして反撃のチャンスを窺うかのように、動き回るのをやめた。 ジェニファ―を今こそ照準を定めようとした。 その時だった。 徹甲虫が悲鳴のような高い声を上げた。 その体は巨大な鋏のようなもので挟まれ、押さえつけられていた。 いきなりことに身構える二人だが、すぐに状況を理解した。 「ねえ!まさかあれが!」 「ええ…来たようですね。本命が!」 辺りの地面が揺れる。 こちらに近づいてくる。 崖の下から登ってくる。 巨大な虫が 【重甲虫ゲネル・セルタス】が 姿を現した。 重甲虫はこちらのすがたを確認すると、 金切声とでもいうのだろうか。 錆びた鉄製の扉を無理やり開けた時のような独特の声をあげ、 体から蒸気をだし威嚇する。 この間も、尾の先の鋏では徹甲虫がもがく中、なにか液体のようなものがアルセルタスに注がれていたのだが、 暴れていた徹甲虫が少しずつ、動かなくなってくる。 「……ああやってアルセルタスを操るんですね……!」 徹甲虫が重甲虫の背中に乗せられた。 徹甲虫も両腕を上げ威嚇の体勢をとる。 重甲虫の目線がこちらに向いた。 「さあ!はじめましょっかい!」 「ええ!」 二人も重甲虫にむけてダッシュした。
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