14人が本棚に入れています
本棚に追加
「おめでとう。綺麗だよ。」
控え室に顔を出してくれた長門さんは、いつもの優しい笑顔で、お祝いの言葉をくれた。
「ありがとうございます。今日を迎えられたのは、長門さんのおかげです。」
花嫁衣装に身を包んだ私は、にこやかに答えた。
あの後、約束通り、長門さんは、私に彼を紹介してくれたんだ。
彼は、とても働き者で、誠実で、私を、本当に優しく包み込んでくれる人だった。
私は、恋をするって、こんなにもキラキラするんだって初めて知った。
あっという間に、身も心も彼の虜になったの。
そして…今、お腹の中には、彼の子供がいる。だから、仕事は辞めて、しばらくは専業主婦の予定。長門さんの言う通りになっちゃった。
今日は、私と彼の結婚式。長門さんには、媒酌人をお願いした。
長門さんが、縁を結んだカップルは、私達でちょうど10組目。ちなみに、どのカップルも夫婦円満で、幸せなんだって。
…だからね、私達もきっと、幸せを掴めるわ。
「晴香ちゃんは、いい奥さんになるよ。俺のお墨付きだ。」
「長門さんのお墨付きかぁ。」
「俺のじゃ、嫌か?」
「ううん。嬉しいよ。期待以上の奥さんになってみせるよ、私。そしてね、素敵なお母さんになるの。だから、応援してね。」
「応援するに決まってるだろう。晴香ちゃんは、俺の大事な娘だからな。」
笑ってる長門さんは、もう一人のお父さんみたい。でもね、私は、知ってるよ。
長門さんも、一人の人間で、一人の男なんだって。
長門さんは、ちゃんと、青春の思い出に、形にならなかった初恋に、終止符打てたのかな…。
私の花嫁姿に、佳代さんをきっと重ねて見ているんだろうな…。
誰にも見つけられない、心の中にしまっておくね。あなたと、私の二人だけの秘密を。
[Fin.]
最初のコメントを投稿しよう!