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「……先輩、」
「おい、西野。見るな」
タンッと音がして、後ろから腕を掴まれた。
でも、もう遅い。
先輩は壁に追いやった女の人に近づいて、キスをした。
「西野、」
後ろに引き寄せられて、頭が包まれた。
力強い腕は私の頭を胸に押し付ける。
でもね、
「音無くん……もう遅いよ。私、見えちゃった」
「っ、」
先輩の、キスシーン。
ビックリしたと言えばビックリだけど。
それよりもね。
「先輩、彼女じゃない人に、キスしてた」
「…………」
既に先輩達の姿はない。
ゆっくりその場に座ったら、音無くんもすぐ横に座った。
「……さっきね、」
私は音無くんに、ついさっきの事を話した。
胡坐をかいている音無くんは、いつも膝に肘をついて頬杖して、仕舞いには寝てるのに、今は違う。
手を組んでじっと私の話を聞いてくれた。
「マネージャーさんが彼女みたいだったのに。さっきの人、違う人だった」
はぁーってため息吐いたら、音無くんが呟いた。
「俺は……知ってた」
「……え?」
「アイツ……結構頻繁に、ああやっていろんな女とキスしてんの」
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