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「あ、先輩……」 一瞬で自分の一番可愛いだろう顔を作る。 「うん?……あぁ!この間の!」 「はい。西野旭って言います!」 「あさひちゃん、ね。って、もしかしてそれ、チョココロネ?」 あっ。 手にした袋を見下ろした。 本当はこっちのいちごミルクちゃんと一緒に食したいんだけど。 ここはひとまず! 「えっと、先輩、これどうぞ」 「旭、」 隣からアイアイが私の名前を呼んだけど、今はごめん! コレ逃すと、先輩との接点がないんだもん! 差し出した袋を見下ろした先輩は、私を見るとゆっくり笑顔になった。 「ありがと。あさひちゃん、優しいね。でも俺はいいから。ほら、別なの買ったし!」 にっこり笑った先輩は、見せるように“ふわふわチョコデニッシュ”の袋を持ち上げた。 「あぁ、それはっ!こっちと悩んだ挙句、今日は泣く泣く手放したチョコデニッシュ!」 「旭、お前、無意識のフリして確信犯だったのか」 「あさひちゃんと俺、好みが似てるんだな!」 きらきらさわやかな笑顔。 あぁ、すがすがしい風も漂ってきそう。 いい匂いもしてきた気がする。 手を振って去って行った先輩の後ろ姿にくらくらした。
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