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教室に戻ってきても、私の頭の中はボーっとしたままだった。 「アイアーイ……」 「あ?」 「私、もう、お腹いっぱいかもぉー」 自分の席に座り机に突っ伏すと、なんと私と同じ格好で机に突っ伏しているお隣さんとばっちり目が合いました。 「……音無くん、今日は居たんだ」 「おい、旭!」 アイアイが慌てたように私の腕を小突いた。 音無くんはクラスでとてもおとなしい。 の、だが。 どうやらアイアイが言うには、“音無くんはおとなしい”では済まされない存在らしい。 『ヤツにはいろんな噂が飛び交ってるんだぞ』 とはアイアイの言葉で、 実はやくざの息子だとか、暴走族の総長だとか、目があったらボコボコにされるとか。 ため口だと軟禁されて、口ごたえしたら半殺し? とにかく、恐ろしい噂が後を絶たないらしいのだ。 どうしてそんな噂が流れるんだろう。 私は不思議に思ったけど、アイアイは『火の無い所に煙は立たない』という。 だけど私は屋上での音無くんしか知らないから、そんな噂は聞かなかったことにした。 「音無くん、コレあげる」
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