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ゆっくり体を起こして私の方へ向け、反対側の窓際に寄り掛かる。
長い脚を投げ出すようにした音無くんは、じっと私の手に収まる袋を見た。
「…………」
「チョココロネ」
「…………昼飯に甘いパンかよ」
アイアイが私の席の向かいから固唾をの飲んで見守っている。
「甘いパンじゃなくて、チョココロネだよ」
「どっちも同じだろ。甘いのなんか胸やけして食えるか」
「あーっ!それ、チョココロネに失礼なんだ!いいよ、音無くんには私のコロネちゃんあげないから」
袋を開けて私はチョココロネに食いついた。
近くから、
「アイツ今日家に帰れねーぞ」
「西野、半殺し決定」
なんて、こそこそした声が聴こえてきたけど、ぜーんぶコロネと一緒に飲み込んでやった。
「あーおいしー」
言いながら、机に置いてあったいちごミルクのストローをパックに差した。
「お前、まさか……」
「いちごミルクと一緒に食べたらもっと美味しい!」
「信じらんねぇ。見てるだけで胸やけする」
思いっきりイヤそうな顔した音無くんはゆっくり立ち上がった。
「あれ?どこ行くの?」
「…………」
前髪とメガネの奥から鋭い視線がじっと私を見つめ、それからふいと逸らされて居なくなった。
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