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階段をゆっくり上がり、最後の踊り場を過ぎ、残り数段の先。 少し重い鉄の扉のドアノブを捻る。 ギィ、と音をさせて開いてゆく先に、まだ肌寒い春の風が吹き抜けた。 ザザッ、風が校庭の木を揺らす。 その中に、キィンと響く金属音と、低めの掛け声と、ボールをける音が混じる。 右には野球のグラウンドがあり、左にはサッカー。 どちらからも、部活の音が響いていた。 ここに来たのは、本当に、たまたまだった。 予定の無い放課後、晴れた空に走る飛行機雲に誘われた。 空に、近づきたかったんだと思う。 屋上へ出た私はフェンス越しに空を見上げた。 しばらく見上げていたら、下から野太い声が聴こえて来て、見下ろしたユニフォームが並ぶ中に、見つけてしまった。 笑顔が眩しい、彼の姿を。 初めて見た人だから、きっと同じ学年ではなさそうだ。 ということは、必然的に先輩ということになる。 まだこの高校に入学して間もない私に、気になる人が出来てしまった瞬間だった。
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