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「あさひちゃん、イイモノ、あげようか」
先輩は鞄に手を入れたまま、悪戯っ子の様に笑った。
「えっ、なんですか?」
欲しい欲しい!!先輩から貰えるものなら、何でも欲しい!!
とは、口が裂けても“まだ”言えないので。
グッと堪えて、鞄に入った腕をじっと見つめた。
「じゃーん!」
効果音付きで出された先輩の手には袋。
「はい、どうぞ」
目の前に差し出されたのは私の大好きなものだった。
「コロネちゃん……」
「あはははっ!そ、コロネちゃん。あさひちゃん、好きだろ?」
「大好きです」
……先輩も大好きです。
「部活前に食おうと思ってたんだけどさ、別なの貰って食べたからあまっちゃったんだ。よかったらどうぞ」
既に私の手の中にチョココロネの袋を持たせた先輩は、満面の笑顔で私を覗き込んだ。
そして大きな手をポンと私の頭に乗せて、ゆっくり何度も往復させる。
屈んで私を覗き込みながら、先輩は爽やかな笑顔を甘くした。
「可愛いあさひちゃんに特別な」
最後にポンポンってさせて、先輩は颯爽と歩いて行ってしまった。
自分の頭に手を乗せる。
撫でられた感触を思いだし、顔が熱くなった。
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