64人が本棚に入れています
本棚に追加
隣に座る音無くんを見上げたら、胡坐の膝に頬杖ついたまま固まっている。
「音無くん?」
覗きこんだら、長い前髪と眼鏡の奥の目が閉じられていた。
「え、ちょっと、もしかして寝てる!?」
肩をゆらゆら揺さぶったら、音無くんは片目を開けて私を見た。
「……話、終わったのか?」
「終わったのかって……もしかして聞いてなかったの!?」
「…………」
否定しないのかよっ!
くわーって欠伸をした音無くんは一度野球グラウンドを見下ろして、それから私に視線を流した。
「浮かれるのは勝手だが……」
「……っ、ん?」
「ちゃんと見極めろよ」
頬張ったコロネちゃんをごくっと呑みこんで、音無くんを見つめた。
見極めろって……?
まだ手に残るチョココロネに視線を落とした。
先輩の、事?
でも、先輩、凄く優しいよ。
仲よく会話もしてくれるし、笑ってくれる。
それに、私の好きなもの、特別って言って渡してくれたし。
頭だって……撫でてくれたよ。
見上げた音無くんは既に知らん顔でグラウンドを見下ろしていた。
「食ったら勉強始めるから、さっさと食え」
そう言った低い声に、慌てて残りを口に放り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!