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隣に座る音無くんを見上げたら、胡坐の膝に頬杖ついたまま固まっている。 「音無くん?」 覗きこんだら、長い前髪と眼鏡の奥の目が閉じられていた。 「え、ちょっと、もしかして寝てる!?」 肩をゆらゆら揺さぶったら、音無くんは片目を開けて私を見た。 「……話、終わったのか?」 「終わったのかって……もしかして聞いてなかったの!?」 「…………」 否定しないのかよっ! くわーって欠伸をした音無くんは一度野球グラウンドを見下ろして、それから私に視線を流した。 「浮かれるのは勝手だが……」 「……っ、ん?」 「ちゃんと見極めろよ」 頬張ったコロネちゃんをごくっと呑みこんで、音無くんを見つめた。 見極めろって……? まだ手に残るチョココロネに視線を落とした。 先輩の、事? でも、先輩、凄く優しいよ。 仲よく会話もしてくれるし、笑ってくれる。 それに、私の好きなもの、特別って言って渡してくれたし。 頭だって……撫でてくれたよ。 見上げた音無くんは既に知らん顔でグラウンドを見下ろしていた。 「食ったら勉強始めるから、さっさと食え」 そう言った低い声に、慌てて残りを口に放り込んだ。
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