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珍しく、アイアイのきりっとした眉が下がっている。
そんな顔、滅多にしないのに。
あんなに先輩の事を毛嫌いしてたくせに、私以上に辛そうにしてる。
心が、ズキズキする。
フラれたせいか、アイアイの珍しい顔のせいかはもうわからなかった。
「私……今日はもうサボる」
「旭、」
「泣いて顔ひどいし。授業とか頭に入んないし」
「っ、」
アイアイは躊躇って、それからため息交じりに頷いた。
「あそこに……行くのか?」
私は頷いて、鞄を手にした。
“あそこ”とは、屋上。
私が毎日行っているあそこは、既に私の居場所の様なものになった。
騒がしい昼休みはもうすぐ終わる。
私はのろのろと階段を上がり、屋上に出た。
昨日あんなに浮かれてたのに、今はどん底だ。
ドアを開けて数歩のところで立ち止まると、後ろから慌てた声がした。
「おい、西野。お前、もしかして、アイツ覗きに来たのか?」
アイツ?
アイツって先輩?
条件反射とでもいうのか、視線をフェンス越しに下に向けた。
野球部の部室の壁に人の姿があって、男が壁ドンしている。
ボーっとその人影を見つめたら、それは先輩だった。
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