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何も考えられない。
音無くんの告白は、強烈だ。
眼鏡の奥の瞳を見つめたら、自分が映ってるなぁって思った瞬間。
目の前数センチに迫って、唇が暖かかった。
え、えっと、いま、もしかして。
キス……した?
「……返事」
ほんの少し離れただけの距離で、音無くんは呟く。
さっきまで先輩が好きだと思っていたくせに、今は音無くんにドキドキしてる。
もし、今のが先輩だったとしたら、私、嬉しかったかな?
……ううん。
きっと、なんでキスしたの?って思うだろう。
「……本当に……私の事、好き?」
先輩は多分、好きじゃなくてもキスするんだ。
さっきだって。
「好きじゃなきゃキスなんかしねぇよ。誰が好き好んでどうでもいい女とキスなんかするかよ。気持ち悪ぃ」
頬にあてがわれたままだった手が、離れたと同時、今度はつまんで引っ張った。
「あのゲス野郎と比べんな。俺はお前しか見てねぇ」
……くはっ、撃たれた。
撃ち抜かれた。
引っ張られた頬が痛くて、夢かもしれないなんてことは思わない。
目の前の音無くんは凄く真剣な顔で、胸がキュンキュンする。
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