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アイアイ同様後ろ手に手を振って、階段扉を開けて帰って行ってしまった。
……っていうか、私の名前、知ってた。
暗いし愛想ないし、クラスでは殆ど誰ともしゃべらないし、てっきり私がクラスメートだということも気付いてないと思ってたのに。
よかった。
私も多少存在感というものがあったらしい。
あの音無くんでも知っててくれた。
これならもしかしたら、先輩も私の存在に気付いてくれるかもしれない。
まだ野太い声の上がるグラウンドを見下ろす。
先輩が屋上を見る事なんてないんだけどさ。
もしかしたら、が、あるかもしれないので。
出来るだけ可愛い顔で振り返ってから、屋上を後にした。
階段を下りる途中、担任と出くわしてちょっと話して。
玄関にたどり着いたら丁度入ってきた野球部員達。
先輩、いないかなぁー。
何気なくを装って、見まわした。
普段、校内では滅多に会う事がないからにやけてしまう。
そんな顔が見えないように俯かせたとき、誰かとぶつかった。
「あっと、ごめんね」
肩を支えられて、顔を上げるとそれは先輩で。
「あっ、」
「大丈夫?ごめんね」
先輩はそう言うと、あっという間に行ってしまった。
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