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じーっと先輩を見つめていたら、隣から低い声がした。
「お前、野球覚える気あんのか?」
はっ!!そうだった!!
音無くんに野球教えて貰うんだった。
忘れて先輩を見てたのを誤魔化すように、大きく頷いて見せる。
「うん!もちろん!!よろしくお願いします、音無センセー!」
「……やめろ。次、先生なんてつけたら二度と教えねぇ」
音無くんはフェンス際まで歩きながら、私をジロリと睨むように見下ろした。
真っ黒な長めの前髪と黒ぶち眼鏡の奥、下から見上げた音無くんの瞳は漆黒で、だけどその瞳が光ったような気がして背筋がゾクッとした。
「二度とってまだ一度も教わってないけどね」
「あぁ?なんか言ったか?」
「いえいえなにも!!二度と先生なんてつけませんって言っただけ!」
誤魔化しながら音無くんの隣まで向かい、しゃがみこむ。
「教えるとは言ったが何から教える?」
胡坐を掻いた膝に肘を載せて頬杖を突く。
流すように向けられた視線に、私は肩を持ち上げた。
「投げて打って走る?」
「あー、だな。まずポジションだが、ピッチャーはわかるよな?」
基本中の基本から。
音無くんは意外にも丁寧に教えてくれた。
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