27/32
前へ
/34ページ
次へ
「……先輩、」 「おい、西野。見るな」 タンッと音がして、後ろから腕を掴まれた。 でも、もう遅い。 先輩は壁に追いやった女の人に近づいて、キスをした。 「西野、」 後ろに引き寄せられて、頭が包まれた。 力強い腕は私の頭を胸に押し付ける。 でもね、 「音無くん……もう遅いよ。私、見えちゃった」 「っ、」 先輩の、キスシーン。 ビックリしたと言えばビックリだけど。 それよりもね。 「先輩、彼女じゃない人に、キスしてた」 「…………」 既に先輩達の姿はない。 ゆっくりその場に座ったら、音無くんもすぐ横に座った。 「……さっきね、」 私は音無くんに、ついさっきの事を話した。 胡坐をかいている音無くんは、いつも膝に肘をついて頬杖して、仕舞いには寝てるのに、今は違う。 手を組んでじっと私の話を聞いてくれた。 「マネージャーさんが彼女みたいだったのに。さっきの人、違う人だった」 はぁーってため息吐いたら、音無くんが呟いた。 「俺は……知ってた」 「……え?」 「アイツ……結構頻繁に、ああやっていろんな女とキスしてんの」

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加