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「ほな・・・」
「ストップストップ、ちょっと一息つかせないと!」
男っぽい口調の女の子が、焦るように関西弁女子を止めた。
「どう?少しは落ち着いた?」
そう聞かれて、僕はゆっくりと目を開けてみた。
めまいは・・・まだしている。
でも、さっきほど高速ではない・・・。
あんなにスポーツドリンクを飲んだのに、気持ち悪く・・・ない。
頭もまだ痛いけど、さっきの最悪の状態から少し抜け出せたような気がする。
ふと、左手に握っていたメガネの存在を思い出し、急いで耳にかける。
目の前にある錆びたベンチを見てから、その上に広がる灰色の雨雲。
風に揺れる数本の電線、線路横の道路沿いに規則正しく植えられている木々。
目の前にゆっくりと広がってきた。
最初は少しぼやけていたけれど、徐々に見えてきた。
ん?!ちょっとメガネのノーズパッド部分が、ずれてるか・・・?
さっき落とした拍子に地面に当たったのかな。
ま、これくらいはすぐ調節できるだろう。
「で、どないやねん!」
僕の返事を待ち切れなかった関西弁の女の子に怒鳴られた。
「あ、あの・・・全然大丈夫です。さっきより全然いいです」
「あんなぁ・・・」
大きなため息が聞こえた。
「『全然』っちゅう言葉の後は『ない』っちゅう否定形の言葉にせんとあかんで。『全然いい』とかありえへんねん。最近の子は、ほんま日本語がなってへん」
「す、すいません」
反射的に謝ってから、僕は体を起こそうと足を踏ん張ってみた。
「無理しない方がいいですよ」
まだ僕の両肩に手を置いて支えてくれている女の子が、気遣ってくれた。
「いや、でも・・・」
「動けそうならせめてベンチに座ろうか?手伝うよ」
「はい」
かっこいい口調の女の子がそう言ったと同時に、後ろの女の子の両手が僕の肩からスルリと離れた。
バランスを崩して倒れそうになる僕を、今度は掬い上げる様に両脇から力強く支えてくれた。
左脇はかっこいい口調の女の子、右脇を抱かえてくれたのは、ハスキーな声の女の子だった。
「せーのっ!」
二人が声を合わせて、座り込んでいた僕を引っ張りあげてくれた。
あれ?この二人、僕よりずっと・・・背が高い?
っていうか、僕の身長は最近やっと160センチに届いたくらいだから、僕より背が高い女の子なんて山のようにいるんだけど・・・。
それにしても、二人とも僕とはかなり肩の位置が違う気がした。
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