第1章 僕が出会った5人の女の子たち

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「ほな・・・」 「ストップストップ、ちょっと一息つかせないと!」 男っぽい口調の女の子が、焦るように関西弁女子を止めた。 「どう?少しは落ち着いた?」 そう聞かれて、僕はゆっくりと目を開けてみた。 めまいは・・・まだしている。 でも、さっきほど高速ではない・・・。 あんなにスポーツドリンクを飲んだのに、気持ち悪く・・・ない。 頭もまだ痛いけど、さっきの最悪の状態から少し抜け出せたような気がする。 ふと、左手に握っていたメガネの存在を思い出し、急いで耳にかける。 目の前にある錆びたベンチを見てから、その上に広がる灰色の雨雲。 風に揺れる数本の電線、線路横の道路沿いに規則正しく植えられている木々。 目の前にゆっくりと広がってきた。 最初は少しぼやけていたけれど、徐々に見えてきた。 ん?!ちょっとメガネのノーズパッド部分が、ずれてるか・・・? さっき落とした拍子に地面に当たったのかな。 ま、これくらいはすぐ調節できるだろう。 「で、どないやねん!」 僕の返事を待ち切れなかった関西弁の女の子に怒鳴られた。 「あ、あの・・・全然大丈夫です。さっきより全然いいです」 「あんなぁ・・・」 大きなため息が聞こえた。 「『全然』っちゅう言葉の後は『ない』っちゅう否定形の言葉にせんとあかんで。『全然いい』とかありえへんねん。最近の子は、ほんま日本語がなってへん」 「す、すいません」 反射的に謝ってから、僕は体を起こそうと足を踏ん張ってみた。 「無理しない方がいいですよ」 まだ僕の両肩に手を置いて支えてくれている女の子が、気遣ってくれた。 「いや、でも・・・」 「動けそうならせめてベンチに座ろうか?手伝うよ」 「はい」 かっこいい口調の女の子がそう言ったと同時に、後ろの女の子の両手が僕の肩からスルリと離れた。 バランスを崩して倒れそうになる僕を、今度は掬い上げる様に両脇から力強く支えてくれた。 左脇はかっこいい口調の女の子、右脇を抱かえてくれたのは、ハスキーな声の女の子だった。 「せーのっ!」 二人が声を合わせて、座り込んでいた僕を引っ張りあげてくれた。 あれ?この二人、僕よりずっと・・・背が高い? っていうか、僕の身長は最近やっと160センチに届いたくらいだから、僕より背が高い女の子なんて山のようにいるんだけど・・・。 それにしても、二人とも僕とはかなり肩の位置が違う気がした。
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