第1章 僕が出会った5人の女の子たち

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え?だって・・・。 僕は今朝、家から徒歩7、8分にある中学校へ、いつものように歩いて行った。 走って汗をかいたりはしていない。 学校で15分程度の用事を済ませてから(僕の学校は土曜日の授業はない)学習塾へ行くために学校から最寄りの駅まで歩いた。 徒歩15分くらいの距離を今日はいつもよりゆっくり歩いたから・・・20分くらいかかったかもしれないけど。 それから・・・電車に乗って、学習塾の最寄り駅で降りて、改札から1分もかからない駅前の塾校舎に、遅刻せず入塾した。 日差しは・・・あった。 眩しいなぁ、と思って空を見上げた記憶はあるが、すごく汗をかいて大変だったという訳ではなかった。 昼まで数学の授業を受けて、昼休憩は塾構内にあるカフェテリアで過ごした。 ここで僕は、母さんのパーフェクト冷凍弁当を食べた。 午後の授業は1時半から4時までで、15分の休憩を1回挟んだけど、トイレに行く以外ずっと教室にこもっていたし・・・。 そんな僕が・・・脱水? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたのだろう。 苦笑しながら、ワンレン女子が話を続けてくれた。 「脱水症状って聞くとさ、炎天下でめちゃくちゃ運動して水分不足で倒れちゃう、みたいなイメージが強いだろうけど、そういう場合だけじゃないからね」 「はぁ・・・」 「今日、結構気温が高くて、さらにじめじめして湿度も高かったからさ、汗をかいても乾きにくいんだよね。そうすると人間ってさ、体温調整しにくくなるんだよ。」 「で、気づいたら脱水になってんねん」 関西弁女子の相づちが入った。 そういえば・・・。 塾の授業が始まる前、教室の南側にある大きな窓の一部分だけブラインドが壊れてしまったと、やくざみたいな風貌だが意外とやさしいと評判の数学講師が言った。 彼が指差した窓の上の方で、片方だけ紐に引っかかってだらしなく止まっている白いブラインドが見えた。 そんなこととは知らなかった僕は、見事にその場所に一番近い席に座ってしまっていた。 今日は、教室はほぼ満席で移動できるような空席も見当たらず、仕方なくずっとまぶしい日差しを浴びながら授業を受けた。 確かに・・・僕は授業を受けながら、ハンドタオルで何度も首筋や顔のじっとり滲んだ汗を拭いていた。
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