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まったく・・・本当に、本当に母さんは・・・。
「親バカ、だね」
「あら、今頃気付いたの~?」
一緒に笑った。
僕は、最近やっと母さんの身長を超えた。
母さんの頭頂部に、カラーリングをしてからしばらくして伸びてきた、白髪が数本見えた。
毛先に少しパーマをかけた肩くらいまでの長さの髪の毛を、いつも両耳に掛けている。
その耳の生え際にも、ちらほら同じものが見える。
また・・・気苦労をかけちゃうな・・・。
鼻歌を口ずさみながら、小鍋を火にかけている母さんを見ながら、申し訳ない気持ちになった。
その日の夜、僕は父さんにも宣言した。
どうしても、都立聖蔭高校を受験したい、入学したい!と、伝えた。
そこで、マンツーマンで対応してくれる塾に通わせてほしい!とお願いした。
この短期間で聖蔭高校を目指すには、自分とちゃんと向き合って頑張っていくしかない!と思ったからだ。
残念ながら、今通っている塾は誰もが知っている大手塾だが、そういう対応は望めない。
リビングの床に正座して、頼み込む。
父さんはソファに座ったまま、腕組をして静かに目を閉じ、しばらく考え込んでいた。
20秒程してから、パッと目を見開いた父さんは
「賢一がそこまでやる気になってる、今でしょ!」
と、右手の人差し指を立てて、大きな声で言った。
その様子を見ていた妹が
「はぁ?それ、もう古いし!」
と、冷たい視線を送って鼻で笑った。
数日後、父さんと2人で、最寄り駅の商業ビル内にある、こじんまりとした個人対応塾を見学した。
父さんより少し若そうな、サラリーマン風の塾長が僕らを笑顔で迎えてくれた。
僕の成績表を包み隠さず見せ、志望校が聖蔭高校だと話しても、困った顔一つせず
「一緒に頑張っていきましょう!」
と、力強くしっかりと握手してくれた。
父さんも安心した様子だった。
それから、学校の担任にも相談した。
僕の突然の宣言を聞いた先生は
「はぁ?!」
と、大声を上げ、目が飛び出るんじゃないかー?っていうくらい、びっくりした顔をした。
ま、それが、当たり前の反応だと思う。
大学を卒業してまだ3、4年しか経っていない、若い先生だ。
その年齢で、受験生の中学三年生を受け持つのだから、教師として学校からの信頼も厚いのだろう。
生徒たちからも人気があった。
自分自身を落ち着かせるために、彼女は2、3回深呼吸した。
僕も一緒に深呼吸する。
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